結論(要点)

根拠: 本記事の各章、参考文献 [1]〜[3]。

点つなぎで育つもの

点つなぎは、数字の順に点を結んで、一枚の絵を完成させる遊びです。1 の次は 2、2 の次は 3 と番号を探しながら進むので、取り組むたびに数の並びに触れます。10 までの点つなぎを何枚もやるうちに、数字を順に読むことにも慣れていきます。

線を引く練習にもなります。点で鉛筆を止めて、向きを変えて次の点へ引く。一枚の中で、この動きを何十回もくり返します。最後に絵が出てくるので、途中で投げ出さずに続けやすいのも点つなぎのよいところです。

点つなぎは、点描写の前の段階として、それ自体に役割があります。楽しんで取り組んでいるあいだは、急いで次へ移る必要はありません。

同じ「点を結ぶ」でも、子どもがしていること

見た目は似ていても、線を引く前に子どもがしていることは違います。

点つなぎでは、次にどの点へ線を引くかを番号が教えてくれます。子どもの仕事は、次の番号を紙の上で探すことです。

点描写の点には番号がありません。見本の線が、どの点から、どの向きへ、点いくつ分伸びているかを見て、自分の紙で同じ点を探します。たとえば見本の線が「左上の点から右へ 2 つ、そこから下へ 1 つ」なら、結ぶ点を決めるまでに、位置と向きと長さを数えていることになります。

描く順番もありません。どの点から描き始めてもかまいません。そのかわり、できあがった形が見本と同じかどうかは、子ども自身が見比べて確かめます。点を結ぶ遊びというより、図形を写す練習です。

点つなぎ点図形(点描写)
線を引く手がかり番号見本の線
次に結ぶ点を決めるもの紙に書いてある番号見本を見た子ども
描き始め1 番の点どの点からでもよい
まちがいに気づく方法絵の形が崩れる見本と見比べる
左は 1 から 5 の番号が付いた点を順に結ぶ点つなぎ。右は 3×3 の点の盤面で、見本の図形を見ながら、次に結ぶ点を自分で選んで写す点描写
FIG. 01点つなぎは番号が次の点を教えてくれます。点描写は、見本の線が右へいくつ伸びているかを見て、結ぶ点を自分で選びます。

点つなぎで線を引くのに慣れている子でも、結ぶ点を自分で選ぶところで手が止まることがあります。その止まるところが、点描写で新しく使う部分です。

なぞる力と、写す力

手先の課題と学力の関係を調べた研究に、線をなぞる課題と、図形を写す課題を分けて比べたものがあります。5〜18 歳を対象にしたこの研究では、性別や家庭の経済状況、IQ、なぞる力の差をそろえて比べても、図形を写す力が算数と作文の成績の差を説明していました[1]。

就学前から追った研究もあります。3〜4 歳のときに測った図形を写す力が、幼稚園に入ったときの、読み書きを中心とした複数の学力テストの成績と、その年度の伸びに関係していました[2]。

96 本の論文をまとめた分析では、見た形を手で再現する力(視覚運動統合)と算数の成績の相関が 0.39、読みの成績との相関が 0.34 でした。どちらも中程度の関連です[3]。

どの研究も、点描写や点つなぎそのものの効果を調べたものではありません。図形を写す練習をすれば成績が上がる、とまでは言えません。

ここからは TENZU の考えです。番号の順に結ぶ作業は、決まった道筋をたどるという点で、線をなぞる課題に近いところがあります。見本を見て結ぶ点を選ぶ作業は、図形を写す課題そのものです。TENZU が点つなぎの次に点描写を並べているのは、このためです。

点描写は、写すところから広がる

点描写の基本は、見本と同じ形を写す「模写」です。同じ点の盤面のまま、鏡に映した形を描く、頭の中で形を回してから描く、平面の点から立体を描く、と練習を広げていけます。

難しさも少しずつ上げられます。点の数は 3×3 から 4×4、5×5 へ。線はまっすぐから、ななめ、交わる線へ。いまどの段階にいるかは、点の数と線の向きを見れば分かります。

TENZU の店主は、子どもの様子を見て点描写を選んだわけではありません。点描写について調べていくうちに、模写の先に対称・回転・立体の練習が続いていると分かり、点描写のプリントを作ることにしました。それぞれの練習で何を使うかは、点描写で育つ力にまとめています。TENZU のプリントはこの順に並んでいて、どこから始めるかはレベル選びガイドで確かめられます。

はじめかた

始める時期は、年齢よりも、点つなぎをしているときの様子で決めます。目安は 2 つです。1〜20 くらいの番号を、迷わずに追えること。点から点へ、まっすぐな線が引けること。

最初の 1 問は、3×3 の盤面に、まっすぐの線が 2〜3 本の問題にします。ななめの線や交わる線は、まだ入れません。

取り組んでいるあいだは、どの線で手が止まるかを見てください。止まったら、答えを教える前に、見本の線が始まる点を一緒に指でさします。「この点から、右にいくつ?」と数えるところまで一緒にやり、線は子どもに引いてもらいます。

写せたら、同じくらいの問題を何枚か続けます。迷わなくなったら、線を 1 本増やすか、ななめの線を 1 本入れてください。迷う様子が続くときは、点つなぎを続けながら、日をあけてもう一度試します。点つなぎと点描写は並行してかまいません。

最初の 1 枚は、ブラウザで動く模写メーカーで作れます。4×4 までは無料で、登録もいりません。画面で問題を作って PDF にし、紙に印刷して取り組みます。続けるときは、3×3 のまっすぐな線から始まる模写の入門編を、1 巻 ¥200 で用意しています。

参考文献

  1. Carlson, A. G., Rowe, E., & Curby, T. W. (2013). Disentangling Fine Motor Skills' Relations to Academic Achievement: The Relative Contributions of Visual-Spatial Integration and Visual-Motor Coordination. Journal of Genetic Psychology, 174(5), 514–533.(ERIC)
  2. Cameron, C. E., et al. (2012). Fine Motor Skills and Executive Function Both Contribute to Kindergarten Achievement. Child Development, 83(4), 1229–1244.(Wiley)
  3. Khatib, Li, Geary, & Popov (2021). Meta-analysis on the relation between visuomotor integration and academic achievement: Role of educational stage and disability. Educational Research Review.(ScienceDirect)